2024.7.4
「ばつぐんの脚力を持つ」
小学校では運動会のリレーでトップに駆け上がり、ラグビーの高校新人戦では50メートルのトライを決めた!
倉敷市出身のラグビー選手・杉野太陽さんの印象を学生時代の恩師二人が語ります。
1・2歩でぐんと進むスピードは、周囲に大きなインパクトを与えていたそうです。
杉野選手は、この6月にフランスで開催された「世界学生選手権2024(7人制ラグビー※)」(主催:FISU)に男子セブンズ学生日本代表として出場されました。大会には世界から選抜された10カ国が参加し、日本代表は3位決定戦で強豪アルゼンチン代表に20対15で勝利。見事メダルを獲得しています。杉野選手は「点取り屋」のポジション・ウイングで、今大会3トライを決め、チームに貢献しました。
小学1年生から倉敷ラグビースクールで競技をはじめ、倉敷工業高等学校を経て、現在、九州学生リーグの強豪校・九州共立大学ラグビー部に所属しています。意欲的に過ごす大学生活最後の年に、今大会とラグビーへの思いをお伺いしました。
Q1 世界学生選手権3位おめでとうございます。感想を教えてください。
ありがとうございます。今大会はチーム目標がメダル獲得だったので、達成出来て本当に良かったです。
上手くいかない試合もありましたが、チームも個人的にも最後まで全力でプレーができての結果だと思うので、後悔なく終われてとても良い経験になりました。
Q2 印象に残った試合や場面は?
自分達が調子の良かった試合もですが、それ以上に対南アフリカの試合が1番記憶に残っています。
彼らは、一人一人が本当に高いスキルを持っていて、試合を心から楽しんでいるという印象がありました。
特に個人技で相手を1歩で置き去りにするスピード、ステップワークというのは、正直「自分も使えるようになりたい」と、試合中に思っていたくらいです。
Q3 ラグビーをはじめたきっかけは?
小学校1年生の時、友人に誘われて始めました。見学に行った際、怖くて入りたくなかったのですが、クラブに入り、すぐ1週間後の試合でトライを取り熱が入ったのを覚えています。
Q4 ラグビーの面白いところを教えてください。
選手それぞれの持ち味が活かされる場面が必ずあるということです。15人の中でフィジカルが強い選手、走るのが速い選手、ステップがキレキレな選手など持ち味が個々に必ずあります。チーム競技なので誰かが体を張ったプレーをすると自然と燃えてきて、チームに勢いがつくのを感じられます。
Q5 ポジション(ウイング)の魅力は?
コートの1番外側で相手をスピードで置き去りにすることだと思います。ウイングはボールを貰ったらタッチラインの隣に位置していることが多いです。そのタッチラインから出ないように相手と勝負し、多彩なステップワークで相手を抜きトライを取り切れたらそれ以上に嬉しいことはありません。レベルが上がるにつれて、役割は増えますが、やっぱり相手を抜くのが1番気持ちいいです!
Q6 杉野選手のプレーでの強みを教えてください。
スピードはもちろんなのですが1番はフィットネス(体力)の部分だと思っています。幼い頃から走ってばっかりだったからか分からないですけど、体力は人よりもあります。試合の後半になってもトップスピードを落とさずに走れるのが強みです。
特に7人制では一人一人の走る距離、スペースが広くなる分、高いフィットネスが求められます。そこでは自分の運動量に自信を持って走り回ることが出来ました。
Q7 ジュニア時代の思い出はありますか?
1番の思い出として、高校3年間のほぼ毎日のフィットネスメニューは頭から離れません。
高校一年生の時、練習が始まる前のグラウンドに挨拶する際、練習前にも関わらず足が震えていたのを覚えています。
黒住先生(倉敷工業高校・ラグビー部監督)のいつ終わるか分からないエンドレスフィットネスは倉工ラグビー部の名物なのではないのでしょうか。
Q8 黒住先生から「常に自分を磨く努力をしている」と聞いています。意識的に行っていることはありますか?
まず、そのように評価してもらえて非常に嬉しく思います。
自分が意識的に行っている事はウエイトトレーニングと自主練習です。筋肉はトレーニングしないとすぐ落ちてしまうので、毎週ウエイトトレーニングは欠かさずにしています。
自主練習では試合で出た課題と自分の弱みを改善できるように考えてメニューを組んでいます。ランニングにおいてもハンドリングにおいてもスキルというのはやらなければ上手くなりません。自分は考えすぎたら分からなくなるので何をしたらいいかとか効率を考える前にとりあえずパス練習をしたり走ったりしようと考えてやっています。自主練習は他の選手との差をつけるのに必須だと思います。ほかの人よりも練習しているという自信は試合でも間違いなく自分に自信を持たせてくれています。
Q9 どういう選手を目指していますか?
プレー面では、ビッグプレーを連発してトライを取りまくるというのは夢ではありますが、自分は常に、どんなに点差が開いて負けていても勝っていても最後まで諦めない選手になろうと思っています。
ラグビーでは、トライを取った後に2点を獲得できるチャンスのコンバージョンキックというのがあり、そのキックを蹴る位置がトライをした垂直線上になります。なので、ディフェンスでは最後まで相手を追いかけ続けて、なるべくコートの外側にトライをさせて、2点を取らせない、ベストは追いかけてタックルして相手からボールを奪い返すというビジョンを最後まで描き続けています。
自分がそういった最後まで諦めないプレーをし続ける事で、観ている人達から自分のチームは最後まで諦めずに応援したくなるようなチームに映ると思っています。観ている人に勇気を与え、応援されるような選手になりたいです。
Q10 ラグビーをしている子供たちや中高生に伝えたいことがあればお願いします。
小中学生のラグビー選手達には勝ちにこだわりすぎず、楽しんでラグビーをしてもらいたいです。楽しむと自ずと良いプレーが出来ていくものだと思います。
岡山県のほとんどの高校のラグビー部が初心者メインのチームになると思います。まずは花園を目指し頑張ってほしいのですが、出来ればその先も視野に入れて高校の時から練習、ウエイトトレーニングに励んでほしいです。
練習をするのはチームのためでもありますが、第1に自分のためだと思います。試合で勝つために練習していた事が、自分の将来に深く関係し、考えもしないチャンスを掴める事がラグビーにはあります。
実際に自分もセブンズの日本代表は大学2年生の時まで考えてもいませんでした。なので、高校生のうちは一緒に練習してくれる仲間を大事にしながら、自分をもっと成長させるように日々追い込み、努力してほしいです。
頑張っていればチャンスは必ず来ると思います。
Q11 今後の目標や意気込みを聞かせてください。
まずは学生ラグビー最後の年に、まだ出場できていない全国大学ラグビー選手権に出場し、関東関西のチームに勝ちたいです。個人としては、もっとスピードを上げ、上のレベルでも通用するハンドリングスキルを身に付けたいと思います。
セブンズラグビーも今後もっと上達していきたいので、またチャンスを掴めるように日々精進していきたいと思います。
また日本代表として名前を挙げられるように頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!
現在も長期休暇には母校の倉敷工業高校で、現役生とともに汗を流すなど交流があるそうです。
黒住先生からは「自分の芯をもち、今、彼はとても光っている。トップリーガーとしてセブンズの日本代表となって、さらには15人制の代表にも入ってもらえたら一番!」と評されています。
倉敷ジュニアスクールの塩津コーチや保護者の方からも「ラグビーは普段の生活がプレーに出る競技。彼は誠実でまじめ。それで日本代表にもなれたと思う。」と絶賛されており、同スクールが全国大会に出場する際への心遣いにも感謝しているそうです。
インタビューからも杉野選手のラグビーに真摯に向かう姿勢が伝わってきます。7人制ラグビーはオリンピック正式競技に採用され、ワールドカップも4年に1度開催されています。杉野選手の活躍をテレビで目にする機会も近いのではないでしょうか。
倉敷から羽ばたき、さらに進化を続けていく杉野選手をみんなで応援していきましょう!
杉野太陽選手
2002年7月16日生まれ 倉敷市出身 九州共立大学ラグビー部 所属
小学生からラグビーをはじめる。ポジション:ウイング
2024年6月現在、セブンズ学生日本代表5キャップ(国際試合に日本代表として出場した数)
※7人制ラグビーについて
セブンズを知ろう|日本ラグビーフットボール協会|RUGBY:FOR ALL「ノーサイドの精神」を、日本へ、世界へ。 (rugby-japan.jp)